泰澄大師と開湯

その一

白山開山を伝える泰澄大師は越前国に生まれ、後に「越の大徳」と呼ばれた名僧。その泰澄が養老元年三十六歳のとき、霊夢の導きにより行者二人を連れ、白山に登りました。頂上に着き、みどりが池のそばで祈りを込めたところ、池の中から九頭竜が現れ、なおも念ずると龍は消え、十一面観音が現れました。

その二

白山での修行も一年を経た養老二年、七月下旬のある夜、泰澄大師の夢枕に白山大権現が立たれて「粟津という村に温泉涌出す。汝、往きて之を堀り、末代衆生の病患を救うべし」と、申されました。大師は神のお告げに喜び、下山して粟津村へと向かいました。

その三

粟津村に着くと、大師を募って村の老若男女が集まり、たちまち人だかり。大師は右手に数珠を握って左手に錫杖を持ち、深く目を閉じて歩くことしばし。つと立ち止まり、ここを掘れと仰せられました。村人がこぞって掘り起こせば、じわじわと湯がにじみ、ついには湧きあふれる湯、また湯。村人は大いに驚き歓喜して大師を生神とあがめました。

その四

大師は滞在を願う村民に対して、聖観世音と薬師如来の像を与え、弟子の雅亮を還俗させて、湯の管理に当たらしめました。後にここに湯治宿を建て、病を癒す霊泉と天下に知られ、今日の粟津温泉にいたります。